僕の気楽飛歩日記

戦中派老人の赤裸々な日記から

 肩を軽くゆすられて目が覚めると僕は手術台の上にいた。

―あれ、どうしたのかな。

 事情がつかめずきょとんとしている僕。

「2百年ぶりのお目覚めです、ご気分はどうですか」

 僕を起こした医師が言った。多くの医師が取り巻くように僕をのぞき込んでいる。

「2百年間冷凍保存されていたので、あなたの身体はどのように変化するのか分かりません。ですから、しばらく入院していただきます」

 医師の説明を聞きながら、僕の体はどうなっているのだろう。と思った。

「今、あなたの体は2百年前とまったく変わりないと思われます。2百年前、おそらくあなたは百年後に目覚めるつもりで自ら冷凍されたと思われます。ですが冷凍をすることは簡単ですが、生前の体を維持したまま解凍をする技術がなかったため、2百年間も冷凍状態だったのです」

 すると、僕の体はどうなるのだろうか。髪の毛は?顔は?まさか幽霊みたいになるのではなかろうな。

 鬼気せまる幽霊の顔を僕の顔に重ねたとき、目が覚めた。

 

  ☆               ☆               ☆

 もう数十年も前、テレビで「数百年後の世界を見たい」と自ら冷凍浸けになっている人の姿を見たことがある。そのとき、現在の技術では生命を維持したまま解凍することはできない。将来、解凍技術が開発されるまで冷凍状態を保つというものであった。

 このことについて驚いたことを覚えているが、最近はすっかり忘れていたことである。

「夢とは脳の暴走である」と言うが数十年も前に脳裏に刻み込んだことを、突然呼び起こすとは、人間の脳も不可解だ。