僕の気楽飛歩日記

戦中派老人の赤裸々な日記から

ふるさと

 中学3年のとき、「30年後の村」というテーマで作文を書かされた。僕らが住んでいる村は30年後にはどのようになっているのかということを作文にし、クラス全員の前で発表をした。

 僕は、「村の道路や小道すべてが2階建てになり2階部分が車や人の通行する場所で、1階部分は地下に埋もれて電気、水道、ガス、排水などを通すトンネルになり、これらを点検修理する地下道には道路標識もある」と書いた。

 級友の発表はその大方を忘れてしまったが、記憶に残っているのが2人いる。

1人は「小学校から大学まで自動的に上がり入学試験は無くなる」と発表し、もう1人は「東京大阪間を1時間で走る弾丸列車が日本海をも縦断する」というものであった。

 この2人の発表は僕の発想と同じであったため今でもはっきり覚えている。

 当時僕らは中学3年生でこれから迎える高校入試の精神的負担に悩まされている時期であった。「入試、入社試験のない社会」に憬れていた。

 弾丸列車は、少年向け月刊誌のグラビアに出ていた「30年後の鉄道」からの発想で日本を取り巻く海の中に施設したチューブ状のトンネルの中を弾丸列車が走る、というものであった。

 弾丸列車は自走式ではなく圧縮空気で押し飛ばされる方式だった。

 後年、僕が大人になってから利用した、あるホテルの料金搬送システムは壁の中に設置されたチューブの中を筒がフロントと客室との間を圧縮空気により行ったり来たりして料金を支払い、領収書を受け取っていた。これを見たとき少年時に抱いていた弾丸列車と同じ発想だと気づいた。

あれから50年経った。

 僕らの予想は見事に外れたばかりか、誰も想像さえしなかった過疎化に襲われている。

 村の人口、家屋も激減し廃屋、空き地が目立ち山に吸収されて場所さえ特定できなくなった家が増えている。

 限界集落に陥るとは誰1人として想像だにしなかった。